2019/04/13

神戸英語教育学会第22回研究大会プログラム

■日 時 2019年5月11日(土) 09:30~16:50
■場 所 神戸市勤労会館 403講習室
(神戸市中央区雲井通5丁目1-2)
■参加費 会員(無料)・非会員(500円)
■問合先 haida6246@gmail.com
(事務局・拝田[はいだ])

■内 容 
09:30~ 受付開始
09:45~ 総会

10:30~12:00  研究発表Ⅰ
1. 「受動的な聴衆から能動的な英語使用者へ移行させるプレゼンテーション指導法について」
 村端 啓介(有明工業高等専門学校) 

2.「教員養成課程における学習英文法の授業実践:
  『主体的・対話的で深い学び』を目指して」
 上野 舞斗(和歌山大学ほか・非
      / 関西大学大学院博士後期課程)

3.「The Efficacy of TT in Japan ― at TEES」
 山内 啓子(神戸松蔭女子学院大学)

昼食休憩(12時00分〜13時00分)

13:00~14:30  研究発表Ⅱ
4.「高校生の外国語学習不安」
  鈴木 誠(埼玉県教育委員会)
  西山 涼太(埼玉県立坂戸高等学校)

5.「多義語習得にカタカナ語が果たす役割」
  木村 麻衣子(武庫川女子大学)

6.「オーストラリアの多文化主義とシティズンシップ
  ―異文化理解を中心に―」
  吉野 康子(順天堂大学)

14:50~16:30
 KELTセミナー:
「4技能育成につながる<多読>の可能性」
 14:50-15:00  趣旨説明と講師紹介
       司会 拝田清(和洋女子大学)

 15:00-15:30  基調報告①
  「多言語話者の多読を用いた言語語習得法」
         伊庭 緑(甲南大学)

 15:30-16:00  基調提案②
  「4技能育成について:高大連携と外部検定試験」
         眞砂 薫(近畿大学)

 16:00-16:40  全体討議:
   フロアを交えて質疑応答と全体討論

16:40~ 閉会式
17:10~ 懇親会



神戸英語教育学会 第22回研究大会
発表要旨

1. 「受動的な聴衆から能動的な英語使用者へ移行させるプレゼンテーション指導法について」
村端 啓介(有明工業高等専門学校)
 日本の英語教育において広く導入されている英語でのプレゼンテーション活動について、本研究では聴衆の能動的な参加態度を育成するべくその指導法に関する実際の学習者の意識調査をもとに考察を行う。昨今、英語教員はプレゼンテーションを授業評価対象として扱う傾向が強く、プレゼンテーションに対してプレゼンターとオーディエンスのコミュニケーションの場であるという認識が教員・学生共に低いという可能性がある。学習者がプレゼンテーションに対して抱いているイメージに関する調査をもとに、技術評価のためだけのプレゼンテーションから脱却し聴衆がより積極的に参加できるような指導を行うことを最終目的として、どのような指導法が適切で効果的かを考える。

2.「教員養成課程における学習英文法の授業実践:『主体的・対話的で深い学び』を目指して」
上野 舞斗(和歌山大学ほか・非 / 関西大学大学院博士後期課程)
 教員養成課程における英文法の授業の役割には,(1)学習者の英語力の支えとなる文法力を養成すること,(2)学習英文法という視点から各文法事項を説明できる力を養成することが考えられる。これらを達成するために,教師による説明を中心とした明示的な文法指導を行い,学習者のメタ言語的知識を高めることが一般的であるが,「主体的・対話的で深い学び」の観点から見ると,このような教師主体の授業形式は多くの問題を含んでいる。人が「教わったように教える」傾向にあることに照らしても,学習者主体の授業形式で(1)・(2)を達成する必要があるだろう。こうした問題意識から,本発表では,「主体的・対話的で深い学び」を目指した教員養成課程における学習英文法の授業実践報告を行う。

3.「The Efficacy of TT in TEES in Japan」
山内 啓子(神戸松蔭女子学院大学)                   
 2020年から教科となる小学校の外国語科は、多くの課題を山積したままのいわば見切り発車になるといっても過言ではない。しかし、待った無しの多くの現場では指導者が苦心しながら指導に取り組んでいるのが現状である。本発表では科研の助成を受け、小学校教員対象のアンケートやインタビュー調査、また4か国の現場視察を通して得たデータの中から特にTTを取り上げ、日本の小学校においてのティームティーチングの効能についての見を発表する。
*「小学校英語教育:ニーズ分析とオンライン研修教材開発」(基盤研究C)

4.「高校生の外国語学習不安」
鈴木 誠(埼玉県教育委員会)・西山 涼太(埼玉県立坂戸高等学校)
 外国語の学習不安の研究は、Aida(1994)やHorwitz et al. (1986)などがよく知られている。両研究は、外国語学習の不安を測る尺度として開発されたForeign Language Classroom Anxiety Scale (Horwitz, Horwitz and Cope, 1986)を用いて、学習者の不安を客観的に考察したものである。同様の研究では、大学生を対象にしたものが多くみられる。本研究では、日本の高校生に焦点をあて、上記の質問紙を用いて日本人高校生の外国語学習不安を考察した。500人を超える高校生にアンケート調査を実施し、高等学校外国語科とそれ以外の学科在籍学習者の外国語学習不安の数値を比較した。外国語科在籍の学習者がそれ以外の学科在籍の生徒に比べ、有意に外国語学習不安が低くなっていることがわかった。また、外国語学習のどのような場面で不安を感じるかについて、学科間で共通点と相違点がみえてきた。学習者の心的態度に目を向けることは、学習者にとって望ましい外国語学習環境を創り出す一助になるのではないか。

5.「多義語習得にカタカナ語が果たす役割」
木村 麻衣子(武庫川女子大学)
 EFL(English for Foreign Language) 環境にある日本において、日本人英語学習者が偶発的に英語の語彙を学ぶことは、一つの例外を除いて非常にまれであると言えよう。その例外とは、いわゆる「カタカナ語」である。「ボリュームたっぷり、デミグラスソースで食べる新作ハンバーガー」や「ロマンチックでハートウォーミングなヒーリングドラマ」などといった商品広告やテレビ番組情報など「カタカナ語」に触れない日は無いと言っても過言ではないだろう。しかし、一見「英語」のようにみえる「カタカナ語」は英語では全く通用しない、役に立たない、あえて言うなら日本人英語学習者の語彙習得の妨げになることもあり、英語母語話者からは嘲笑されたり、毛嫌いされたりもする。では「カタカナ語」にはネガティブな側面しかないのだろうか?日本人英語学習者の語彙習得にポジティブにはたらく可能性はないのだろうかと考え、「カタカナ語」の存在を、英語語彙習得の側面から考察する。

6.「オーストラリアの多文化主義とシティズンシップ―異文化理解を中心に―」  吉野 康子(順天堂大学)
 日本にはすでに約128万人の外国人労働者がいる事実(2018年11月11日朝日)があり、多言語・多文化社会が進んでいるが、多文化教育に重点がおかれてこなかったために、教育現場で異文化理解が十分でなく、悩む事例を聞く。本発表においては、人口の26%は外国生まれという多民族・多文化国家であるオーストラリアの例を参考に、教員養成や教員研修で有意義な異文化理解教育を検討する。
 具体的には、オーストラリア社会の多文化主義からシティズンシップへの変遷をたどる。そして、シティズンシップが、オーストラリアを束ねる総合力(unifying force)を強調するとともに、教育の面でも、国家としての枠組みが強化され、その象徴ともいえるナショナル・カリキュラムに焦点をあてる。その中で、汎用的能力(general capabilities)と定められている異文化理解が、実際、アデレードの学校でどのように実践されているかを紹介する。その事例観察から、今後、日本での異文化理解教育に応用できることを提案したい。